【鼻出血記#03】救急処置室にいる、救急でない人々
※オカルトな話題ですから、苦手な人はスルーで。
鼻血を出して救急車でとある郊外の病院に運ばれたおぢさんは、救急処置室に案内されて手当を受けました。が……。
まぁ、結論からいって全く役に立たなかった感じ。
いちおう鼻を見てくれて止血ガーゼをぎゅうぎゅう詰め込まれましたが、結局の所は止まるまで待つしかなかった……というところです。
にしても、鼻血もここまで大量に出るとすごいもんですね。
鼻をふさいでも喉からだごっぶごっぶと垂れ落ちてきます。
血はすぐに身体の中でかたまって、ゆるい糊状になるものですから、それが気持ち悪いのなんのって。
飲み込んではいけないと言われましたが、こんなもの飲みたくない。
そんな思いでケロリンにどんどんと吐いていきました。
先生1「僕は耳鼻科が専門でなく、今日は耳鼻科の先生がいませんから、処置をすることができません。落ち着いたら明日病院に行って下さい」
残念そうな声で、先生が気づかいながら話してくれました。
血圧はぐんぐん上昇して鼻血がさらに出始めたので、強めの降圧剤が処方され、それでようやく出血は落ち着いていきました。
今日の救急処置室は患者さんは多くなく、後ろでなにかサッカーかバスケで強打した若い人が運ばれてきて苦しそうに唸っているのみでした。
僕がケロリンを抱えた目の前にはシーツだけ引かれたベッドが4つ。
しかし、そこに3人の人がそれぞれに背中を向けたり横顔見せたりして座っているんですね。
おぢさん「なぁ、姉ちゃん、3人いるな。見えるか?」
姉「えっ?」
姉に確認をすると、鼻血を出したままの僕を覗きこみ、その目がちょっとだけ開きます。
姉「私には見えんけれど……」
やっぱりなと思うのです。
明らかにおかしい。
ただただ座っているだけで、看護師さんもお医者さんも素通りしていく。
手前は痩せ細ったおじいさん。
その奥、真ん中のベッドは白髪のおばあさん。
一番向こうは中年のふとった女性。
うつろな顔をして、診察をまっているみたいにただただジッとしている。
こんな状況でなければ、みわけがつかないくらいに普通なんですね。
この人々がこの世の人ではないことはわかるんですけれど、なんでいるかはまったくわからないし、関わりたくないから血がとまるのをずっと待っていました。
これが怪談話だともっと面白い展開になるんでしょうがね、僕には見えるだけ、ただそれけのことでした。
こわい……と言う感じはなかったなぁ。
あわれ……でもない。
普通、ただただ普通。
姉「病院やから、おるやろう」
今回は見えなかった姉はボソリと呟きました。
Q:幽霊っているの?
A:いないとはいえないかな……
実は自分は平成16年にとあるボロアパートを借りたのをキッカケに、なんだかよくわからないけれど、よくわからないものが見えるようになったんですね。
それらが幽霊だとかそう言われると、もしかしたら幻覚を見ているかも知れない。って感じですかね。ただ幽霊はいないかっていわれたら、おぢさんはいないとは言えない……としか言いようがない。
そんなわけで苦労して血を止めた僕と姉は、ケロリンをざっと洗ってもらって手渡されてから、人気のない夜の総合病院をとぼとぼ歩むことになりました。
ほら、こういう所出るって言うから、僕もなんとなく好奇心半分で歩いて見ましたが、結論から言うと全然遭遇しませんでした、とさ。
ほっとしたような、がっかりしたような。
そんなわけで、ガードマンに5000円を払ってから、タクシーをよんで家に帰った僕達。
幽霊がいるかどうかわかりませんが、夜が明けた夕方頃。
そう!地獄のような出来事が待ち構えているのでした。